今回は二上山(雄岳517m雌474m)と當麻の里を訪ねます。
登山口に入ると雄岳山頂まで2.4q。静かな心地良い登山道を歩きます。しかし、高度を増すにつれ山道は険しくなります。ストックを利用されている方は持参されるとよいでしょう。ゼエーゼエ―喘ぎながら登り詰めると、山頂近くに大津皇子の墓に着きます。大津皇子は天武天皇と大田皇女の間に生まれた子で、皇位継承の争いに巻き込まれ、24歳の若さで命を絶たれた悲劇の皇子として知られています。二上山に葬られた弟をしのび、「うつそむの人なる我や明日よりは 二上山(ふたがみやま)を弟(いろせ)と我が見ん」と、姉の大伯皇女が詠みました。この歌によって、二上山は大津皇子とゆかりの深い山として知られるようになりました。ロマンティックな思いに浸りながら雌岳に上がると、春霞の中、大和三山を望む素晴らしい景色が目を引きます。
二上山を下りたところに鳥谷口古墳があります。石室には加工途中の石棺石材を使用していることから、これが真の大津皇子の墓とする説があります。そしてその先、真柱一本で宝形造の瓦屋根を支える風変わりな建物があります。その形から『傘堂』と呼ばれ、いつの頃か、真柱の周囲に身体を接しながら巡り、安楽往生を願う風習が生まれ、當麻連座(たいまれんぞ=當麻寺練供養)には大勢の人々が『傘堂』を訪れます。
その當麻寺。中将姫が織ったとされる曼荼羅を祀る寺として有名で、毎年5月14日に當麻連座が行われます。この行事は、観音菩薩や勢至菩薩などの二十五菩薩に扮装した人達が、西方極楽浄土に見立てた本堂から娑婆堂に架けた橋を渡り、中将姫を救い上げ再び浄土へと帰る宗教劇で、當麻寺一山の僧と菩薩講の人々によって営まれています。
春爛漫の一日、二上山と當麻の里のウォークを存分にお楽しみください。なお、近鉄をご利用される方は大阪線下田駅が便利です。