滝坂の道は柳生に通じ、剣豪“柳生宗矩”にまつわるイメージが浮かびますが、この道は、春日の神山にまつわる信仰の道でもありました。都会に接して存在する春日原始林の豊かな自然をたっぷりとお楽しみください。
寝仏…林を縫って流れる能登川に沿って進むと、滝坂の道に差し掛かります。緑のトンネリに入るとホッと一息。石畳を敷き詰めた山道をしばらく歩くと、左手に三角状の岩があります。裏に回ると、横たわっている大日如来の姿が見られます。
夕日観音…寝仏を過ぎると間もなく、急斜面を上ったところに夕日観音がみられます。現在は、危険防止のためロープが張られており、少し見にくいですが、夕日を受ける方向に向かっているのでこの名前がついています。
朝日観音…さらに石畳の道を上っていくと、対岸の大きな岩に朝日観音が見えます。夕日観音と同じく弥勒菩薩が彫られ、鎌倉中期の文永2年(1265)の造立銘が刻まれています。弥勒菩薩は、いまは兜率天で人々を救うために修行中ですが、釈迦が亡くなってから56億7千万年後に如来になって人々を救ってくれる仏と考えられています。そしてその間、人々を救ってくれるのが地蔵菩薩であるとされています。
首切り地蔵…朝日観音を過ぎると間もなく首切り地蔵の立つ分かれ道に着きます。鎌倉時代に造られた像で、凝灰岩で造られた像の首に折れ疵があり、荒木又右エ門が首を切ったという伝説があります。
帰りは、春日奥山遊歩道のなだらかな坂道を下ります。真夏を思わす季節の中で、一服の涼感を味わえるコースです。