今年も残すところあと1か月。今回は、「弘法大師の足跡」を訪ねて、初冬の古都を歩きます。12qの平坦で歩きやすい道ですが、ステッキを使用されている方はお持ちください。
大安寺…聖徳太子が額田部に建てた熊凝精舎(くまごりしょうじゃ)が前身。最初の官寺(朝廷が建てた寺)で、藤原京での大官大寺が平城京遷都に際して、大安寺としてこの地に移されました。奈良時代には国内外の多くの名僧が滞在し、三論宗を中心に仏教の学問を深めていました。歴代名僧を祀る五輪塔には空海の名も刻まれています。また、八幡神社の南側にある東西の七重塔の基壇に残る礎石が往時の姿を伝えています。
また弘法大師のご縁日の4月21日には、大師の御影を祀り、遺徳を偲んで行われる法要が厳修されています。大安寺では、「火渡りの行」が行われます。見どころに載せている写真は今年4月21日に行われた「火渡りの行」を撮ったものです。
元興寺…わが国初の本格的寺院・法興寺(飛鳥寺)が、平城京遷都に伴いこの地に移り、元興寺と称しました。本尊は、奈良時代の後期に、学問僧智光が感得したとされる智光曼荼羅です。そして、その本尊を祀る本堂の屋根は、行基葺(ぎょうきぶき)といわれる独特の瓦の葺き方がされています。
宝輪館に安置されている弘法大師坐像は、奈良で最古ともいわれる像で、もとは禅室に祀られていました。
十輪院…吉備真備の長男である朝野魚養(なかい)が建てた寺と伝えられています。貴族の邸宅を思わせる本堂には立派な石龕(せきがん)が組まれ、その中にお地蔵様が祀られています。空海が一時滞在されたとも伝えられており、また、魚養は能書家で知られ、空海の書道の師ともいわれています。
春日野園地…吉城川(よしきがわ)沿いの紅葉が鮮やかに立ち並んでいます。大勢の観光客は楽しそうに、鹿と紅葉にシャッターを切っていました。ここで昼食です。紅葉は、あと一週間持ってほしいものですネ。
東大寺…荘厳な南大門をくぐり、大仏殿の手前、右側に勧学院が見えます。その奥にある真言院は、唐の留学から帰国して真言宗を開いた空海が、810年頃、東大寺の別当職についた時に建立されたものです。
戒壇堂は受戒の儀式を行うところです。奈良時代、私度僧(勝手になった僧)が増えたため、聖武天皇が唐から高僧鑑真和上を招き受戒の制度を整えました。また私度僧だった空海が、留学生として唐に渡る前にここで受戒しています。
興福寺…享保2年(1717)1月4日、講堂、西金堂、中金堂が焼失してから約300年。待ちに待った中金堂が先月10日に落慶されました。その西にある南円堂は藤原冬嗣が建立したものですが、空海は南円堂建立の計画に携わったといわれています。